「着眼点に6つの応力成分(σx,σy,σz,τxy,τyz,τzx)が同時に作用しているとき,その点のせん断ひずみエネルギが材料によって決まるある値に達すると破損する。」という仮説をせん断ひずみエネルギ説(shearing-strain energy theory)と言います。もっとも多く使われています。単位体積当たりのひずみエネルギは,容積ひずみエネルギU1とせん断ひずみエネルギU2に分けることができ,後者が破損を決定づけるという考え方です
単位体積当たりのせん断ひずみエネルギは次式で表されます。Gは横弾性係数です。
今,単純な引張応力が作用しているとき(単軸応力)を考えます。そしてそれが降伏状態だとします。降伏応力をσoとおいて,σx=σo,σy=σz=τxy=τyz=τzx0ですね。単軸応力の降伏状態のせん断ひずみエネルギは次式となります。
そして(1)式の状態も降伏状態とします。(2)式の状態は明らかに降伏状態なので,両式を等しいとおくことができます。次式です。
上式を主応力で表せば次式となります。
(3)式と(4)式が,ミゼス(Mises)の降伏条件式となります。式の左辺が右辺より大きくなったときに,その材料は降伏したと判断します。
(3)式と(4)式のσoをσeqとおけば次式となります。σeqはミゼス相当応力,ないしは相当応力と呼ばれています。
相当応力は,「降伏したかどうかの判断」の他にいろいろな用途で使われています。荷重が作用した物体のある点の応力は6つの応力成分(σx,σy,σz,τxy,τyz,τzx)が同時に作用しているのだけれども,1種類の応力σeqで6つの応力成分を代表させようという用途です。
有限要素法ソフトを使って応力状態を見るときの第一選択肢は,相当応力の表示です。
仮想仕事の原理 を追加しました。